2026年1月10日土曜日

長い映画を見終えたような読後感――『テスカトリポカ』レビュー

※本記事ではAmazonアソシエイトを利用しています。
※当記事で紹介している本はこちら
『テスカトリポカ』(佐藤究著)


本作を読み終えた後、まるで長い映画を見終わったあとのような感覚が残りました。
ジャンルで言えば、犯罪小説。
でもただのクライムノベルだと思って読むと、たぶん面食らう。

舞台はメキシコ、インドネシア、日本へと広がり、描かれるのは麻薬密売や臓器密売といった人間の闇。物語の奥には、アステカ神話を拠りどころにした歪んだ信仰の構造が流れていて、それが登場人物たちの選択や暴力を正当化していく。

スケールの大きさ、題材の重さ、神話的要素が幾層にも重なり合い、すべてが混ざり合って進んでいく。その重層性ゆえに、読み終えた後も簡単に整理がつかない。

舞台がメキシコからインドネシア、そして日本へと近づくほど暴力は派手さを失うけれど、代わりに逃げ場のなさが残る。
近いのに見えない。
静かでじっとりとした恐怖が染みてくる。

目を背けたくなるような描写も少なくない。読み進めるには、ある程度の覚悟がいる。

直木賞、山本周五郎賞のダブル受賞作であるこの本。
強烈な読書体験を求めている人には、間違いなく刺さると思います。

覚悟ができた人は、こちらから。




最後までお読みいただきありがとうございます。


2026年1月6日火曜日

2025年12月に読んだ本まとめ| 祖母姫、ロンドンへ行く/けんごの小説紹介/GOAT 冬号


 2025年12月に読んだのは、小説1冊、紹介文の本1冊、雑誌1冊。
 人の仕事に感服し、作家の素顔を少し覗き、旅に出たくなり、心を外へ向けてくれた3冊の本を紹介したいと思います。

1冊目は、『祖母姫、ロンドンへ行く!』椹野道流著 



「一生に一度でいいからイギリスに行きたい。お姫様のような旅がしてみたい」
そんな祖母様のお願いをかなえるべく、80歳を超える祖母様と孫娘(著者)の二人きりのかなり贅沢なロンドン旅の話。
 ファーストクラスの飛行機に乗り、一流ホテルのサービスを受ける。すごいな、素敵だなだけでは終わらない。80歳超という祖母様を連れての海外旅行、その大変さがリアルに伝わってきました。作中「プライドが高すぎる面倒くさい年寄り」とありましたが、自己肯定感が高くとてもキュートな祖母様、そんな祖母様に憧れの気持ちも湧いてきました。
 旅を通して祖母様をエスコートされる著者が、現地の一流CAや一流のバトラーからホスピタリティーを学ばれ実践されていく様子がエクセレント。相手の誇りを傷つけることなく振る舞うというのは勉強になりました。
 最後には、ほろっとくるところもあり、自分も大切な人と元気なうちに旅がしたくなる、そんな一冊でした。
 Amazonで見る→『祖母姫、ロンドンへ行く!

 2冊目は、けんご著『けんごの小説紹介』



  SNSを中心に本の紹介をされている著者の小説紹介本です。
 著者が本を読むきっかけになった1冊、その後、読書沼へと引きずり込まれるきっかけとなった2冊はぜひとも読んでみたい。読めば読むほど、次に読みたい本が増えていく。この本はサブタイトルにもあるように読書の沼へと引きづりこまれる危険な本でした。

 最後の1冊は、小学館発行の文芸誌『GOAT』Winter



  現在活躍されている作家さんたちのエッセイや小説が1冊にまとまって、さらに作家さんのインタビューや対談集が凝縮されて結構なボリューム。なのに定価510円。なんか間違ってないですか?ってツッコミたくなるようなお値段で販売されています。
 気になるところからちょこちょこつまみ読みができて作家さんの素顔も覗ける、贅沢な1冊だと思います。
  Amazonで見る→『GOAT』

 2025年年末最後まで慌ただしかったですが、ほんの数分でも本を開くと時間の流れが少しゆるむ気がします。2026年も、引き続き楽しんで読書をしていきたいと思います。
 このブログが、皆様の心に残る本に出会えるきっかけになりますと幸いです。

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

2025年11月6日木曜日

【読書記録】2025年10月読んだ本のまとめ/有吉佐和子/綾辻行人/浅倉秋成

 おはようございます。

 今年も残すところあと2ヶ月を切りました。今年1年何が出来たかなとそろそろ振り返る時期となります。

 私は今年(つい先月ですが)、新しくYouTubeを始めました。

 見る専門から作る側へ。

 これがとても面白い。なんでもっと早く始めなかったんだろうて後悔するほど、今は楽しみながら動画を作っています。

 きっかけは知り合いがYouTubeを始めたことでした。身近な知り合いが、YouTuberだなんて。しかもスマホひとつで撮影、編集もこなしてると聞いて、なんだか知り合いの動画を見ていてワクワクして私もやってみたくなりました。

 もし今、YouTubeやってみたいけど二の足踏んでたらもったいない。一本でも作ってみてください。楽しい、楽しくない、面白い、しんどい…色んな感情も交えてきっと新しい体験ができると思います。

 さて、前置きが長くなりましたが、10月に読んだ本をまとめてご紹介したいと思います。(※当ブログは、Amazonアソシエイトに参加しています。)



 10月は全部で4冊読了しました。

 1冊目は、有吉佐和子著の『紀ノ川』。


 出版年は、1964年。和歌山県の紀ノ川を舞台とし、明治・大正・昭和の3世代にわたる女たちの物語です。
 物語は花の嫁入り支度から始まり、花からその娘(文緒)、孫(華子)へと物語は3部構成で流れていきます。
 代々受け継がれる「家」の格を重んじ、「嫁」として「母」としてあらゆる物事にぬかりなく、「家」を大きくしていくことに生涯を捧げる花。その花の娘として生まれた文緒は、そんな母のことを家に縛られた奴隷のようだと非難し反発し、「家」の外へ、広い世界へと向かいます。そんな文緒の子として生まれた華子は、花からみると外国人のよう。
 どんなに反抗されても憎い口をきかれても母と娘で何か交じり合うものがあるという花の期待する心が、共感をもちながらも心苦しくなりますが、本の終わりが近づくにつれもっと読んでいたい気持ちになりました。
 華子に続く第4部、さらに第5部と、平成、令和の時代の続編はでないかなと期待しています。


 2冊目は、綾辻行人著、『十角館の殺人』。


 出版年は1987年、40年近くも前のクローズドサークルミステリーの代表作です。

 「ミステリー史上最大級の驚愕の結末」という裏表紙にかかれているあらすじの通り、「え!!!」となるページが来て、思わず最初のほうのページを読み直しました。

 物語の主要メンバーである大学生がタバコを吸う場面がやたらと多く、時代を感じるところもありましたが、物語はテンポもよく、400ページ以上ありますが、一気に読めちゃう本でした。なかなかの衝撃を受けること間違いなしの傑作です。

 Amazonで見る「十角館の殺人」綾辻行人

 

3冊目は、浅倉秋成著『六人の嘘つきな大学生』。


 2024年に映画化もされた、こちらもミステリー小説となります。
就職活動をする大学生たちで最終選考に残った6人の中で起こったある事件。犯人は誰なのか?もう、みんな怪しい。読み始めると続きが気になって、一気に読んでしまいました。


 最後4冊目は、別冊ダ・ヴィンチ『令和版 解体全書』



 令和に活躍されている小説家15人の、作品歴などをインタビュー形式にまとめた本です。普段読んでる本の作家さんが写真で見れるのも嬉しかったです。「好きの履歴書」というコーナーでは、各小説家の生い立ちや好きなものがこれも写真付きで紹介されていて、同世代の作家さんでは共感するものも多く、読んでいて楽しめました。
 それぞれの小説家が影響を受けた本や漫画、最近読んでめちゃくちゃ面白かった本なども紹介されていて、読みたい本がどんと増えました。
 

 以上、10月はこの4冊でとても素晴らしい読書体験ができました。11月もどんな本との出会いがあるか楽しみです。
 
最後に、立ち上げて間もない私の拙いYouTubeチャンネルですが、こちらにリンクを貼り付けさせて頂きます。
イイネやチャンネル登録をして頂けたら、とても励みになります。

YouTubeチャンネル


最後まで見ていただきありがとうございました。



長い映画を見終えたような読後感――『テスカトリポカ』レビュー

※本記事ではAmazonアソシエイトを利用しています。 ※当記事で紹介している本はこちら → 『テスカトリポカ』 (佐藤究著) 本作を読み終えた後、まるで長い映画を見終わったあとのような感覚が残りました。 ジャンルで言えば、犯罪小説。 でもただのクライムノベルだと思って読むと、た...